(2017・2021)茶道具、映像、茶室、インスタレーション、パフォーマンス

 内閣府がハザードマップを作成公開するほど噴火の可能性を認められながらも、日々平和な日本を象徴
するかのように表象される富士山について、改めてそのリスクを討論するための茶席。東京も火山灰が5~
15cm積層し電気、水、物流、交通などのインフラ停止の恐れがあります。それぞれの茶道具は富士山噴火
について語る為の模型や日常のリスクを表すものとなっており、これらの道具をヒントに、無意識に軽視
されているリスク事象「灰色の犀」について考えます。
私たちはどのようにこの重大なリスクと背中合わせの日常を生きるのでしょうか。



​​​​​​​以下茶会第一回目
富士釜と新噴火口茶釜蓋
富士山ハザードマップによる噴火口想定ラインの一つ、宝永噴火口上部からの噴火を模した蓋。その新しい噴火口から湯気が立ち昇る。蓋は柔らかい素材で出来ており、噴火前には山が膨らむように、湯の沸騰で蓋の山全体も膨らみ上下する。


富士山凹茶碗ー噴火前2020
現在の噴火前の富士山の3Dモデルで制作した茶碗。今後噴火後想定のいくつかのバージョンが増える予定。
L46溶岩流シナリオ茶碗(6時間で東名に、12時間で2本目の東名に、7日目で新幹線へ到達)
3つの山体変形シナリオ茶碗(3つ同時には起こらないが、起こり得る3つ)

火山灰毛氈
4cm(大宮)、9cm(アキバ)、11cm(東京駅)、12cm(品川)の厚さの毛氈があり、それぞれありうる降灰の厚さを示している。

お花
傷ついたヘルメットと野草、富士山噴石

掛軸
5時間前に富士山噴火の警告が届いたとき、私たちはどうするのでしょうか。長谷川家の両親との携帯での会話。

茶室「灰犀庵」
佐野文彦による建築
茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶茶
「未来」を考える時、もはやキラキラした未来というものを想像するのをやめてしまった。
 テクノ・オプティミストと自認している私でさえ、もはや無邪気に無批評に経済成長し上向きの未来を描くことに罪悪感すら感じている。テクノロジーの開発の方向性について提示された諸案の、あまりにも無邪気な開発目標に「それって当分の間お金のある人にしか分配されないのでは」と思った。1を10にするのではなく、-10の人を1ぐらいにする方向性、今本当に必要とされている皆のためのテクノロジーとはなんだろうか?と考えた時、災害についてどのようなテクノロジーがあるのか気になった。
 コロナ禍になってから、もしここで大地震がきたらどうしよう?と不安になった人は日本には多かったことだろう。実際にトルコではコロナと地震という災害と災害の掛け算も発生した。気候変動によって百年に一度の台風も頻発することだろう。日本は自然災害には事欠かない、実際、南海トラフ地震、首都直下型地震と富士山の噴火もありうる。すでに内閣府は数年前から富士山噴火についての調査と対策を始めている。
 不穏な未来を前提に、それでもポジティブな未来をどのように考えたら良いのだろうか。
 ロンドンやボストンそして東京と、ここ10年ほどシェアハウス暮らしをしていたのだが、最近仕事で京都で一人暮らしをしている。引っ越し先の近くに下鴨神社があり、河合神社も併設されている。そこは鴨長明の出身地であり「方丈記」にある災害や飢饉の描写とともに、彼が移動しつつ住んでいたモバイルハウス「方丈」の家が再建されている。その方丈家屋のなかには琵琶置き場があり、移動生活の中にも音楽や歌を読む芸術がいつもそこにある、真の豊かさを感じる暮らしぶりが窺われた。
 もし将来的に、災害移民として転々と暮らさなくてはならないとき、もしくは貧乏でトレーラーハウス暮らしになったら、そこに友人たちと村のようなアートのある「コミュニティーぐらし」をしていけたら私は嬉しいのではないかと思う。
 ノマディック・テクノ・ヒッピーとしてテクノロジーと文化と移動の幸せな暮らしは如何に可能なのだろうか。

協力:京都工芸繊維大学 デザイン主導未来工学センター KYOTO Design Lab 、
寺田倉庫、
茶室建築 佐野文彦、
茶人 松村宗亮、和菓子 紫をん、
ゲストスピーカー 防災科学技術研究所 藤田 英輔、
茶会映像制作:栗原勲、加藤公和(F&S CREATIONS)、佐藤なつみ
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