「だれでも、いつでも、ひとりの子ども」というフレーズとともに人工子宮が使えるようになった50年後、2073年の東京。この設定をもとに、LARP(ライブアクションロールプレイング)というキャラクターになりきって即興的な会話や演技をする、一種のごっこ遊びの手法を用いて人工子宮がもたらす様々な倫理問題やリスク、そして喜びを炙り出すためのワークショップを行いました。ここでは3時間を超えるワークショップを要約した映像と、セッションで発生したシナリオの概要や疑問を展示しています。
人工子宮はまだ完成されていない技術であり、FDAが人間での実験の実施について議論していたように「母親の体外で超低出生体重児の発育を支援する医療機器」が現状ですが、遠い未来では「胚の作成から誕生までの発育を支援する医療機器」となることでしょう。これにより妊娠出産に関する女性の年齢、健康状態、性別などの壁がなくなり、例えば100歳の男性でも自身の子供をひとりでも持つことが可能になります。
では人工子宮の登場により表出する倫理問題はどのようなものがあるのでしょうか、映画The Pod Generation (2023)では以前は性差によって親になる心の準備に差が出ていたものが、子宮が外部化されることにより男女の差がなくなる状況が示されたり、自然妊娠派との対立や自然回帰的な反応も示唆されたり、巨大資本の会社に属するとそのサービスが使えるなどの制度の登場などが語られていました。また、以前から新しい技術は裕福な人々から配布されることが批判されており、今回の私のプロジェクトでは子供を持つ権利を全ての人にオープンにするために、政府が無料でひとり一度無料で人工子宮を使えるということに設定し、この状況ですら出てくる問題をロールプレイにより炙り出すことを試みました。
このロールプレイの映像では5人の人間と、openAIによって演じられた「政府AI」も含めてロールプレイをすることにより、より没入した未来体験をしつつ即興かつ協力的に未来のシナリオを生成するという試みです。
このセッションは3つのシーン、3時間に及び、それを20分ほどの映像にまとめました。また編集時に動画の生成AIを使用し、そこで生まれたキャラクターを画像化そして映像化し、演者にオーバーラップさせることで、短時間かつ安価にSF映画的なものの生成を試みています。
展示会場の方では、来場者はこのシナリオについて、期待や不安、自分の考える新たな未来像などを自由に書き込こみ、展示期間中に多様な人々からの意見を募っています。

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